「俺のミスだ」
部屋の隅に下がっていたラルフは、短くそれだけ言ってうつむく。
「お前は、何をしていた!」
レイがラルフの胸ぐらを掴み上げた。

「ちょっと、レイ! 待ってよ!」
「美咲様は、黙っていて下さい!」
「……っ!」
すごい剣幕で怒鳴られて、私は思わず首を引っ込めた。

「危険と分かっていながら勝手に美咲様を連れ出して、あげくにこんな……大けがをさせて! どういうつもりだ!」
「悪かった」
「言うことはそれだけか!」

レイの拳がラルフの頬に直撃して、ラルフは壁まで吹き飛ばされた。
さらにそれを追いかけて、レイは再びラルフの胸ぐらを掴んで立ち上がらせる。
「見損なったぞ!」
「ちょっと、待ってってば!」
レイの耳には、もう私の声も届いていないらしい。
ラルフはただじっと唇を噛んで耐えていた。

「今回の任務は、お前一人に出されたもののはずだ。
 なぜ美咲様を巻き込んだ!」
「…………」
「守れないのなら、連れて行くべきじゃない。そんなことも分からなかったのか、お前は!」
「………っ」
ラルフは唇を噛んで、拳を握りしめてレイの罵倒をじっと耐えている。
私が無理矢理ついて行ったのに、ラルフは一言も弁明しようとはしなかった。

私はレイを止めようとして、ベッドから身を乗り出して……そのまま床に落ちた。

「……っ痛」
「美咲様!」
さすがにレイも気づいて駆け寄ってきてくれたから、まあ、良しとしよう。

「……兄貴の言う通りだ。
 俺は美咲を守れなかった。守るって約束したのに、こんなに大けがさせちまった。
……俺は、兄貴みたいに……何もかも完璧にはできない!」

叫ぶように言うと、ラルフは大きな音を立てて部屋を出て行ってしまった。

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